ナイロンラインとフロロカーボンライン
ショックリーダーに適したラインの素材は、どちらでしょうか?
釣り人の永遠の悩みとも言えます。
今回は、ショックリーダーに求められる要素を、様々な角度から見つめ直しました。
- 根拠を持ってショックリーダーに適したラインを知りたい
- 青物を釣りたくて太いラインを使いたいが、扱いにくくて困っている
- 細いショックリーダーを使いたいが、強度が弱くて困っている
これらの悩みをこの記事では解決できるはずです。
結論として、ナイロンラインほどショックリーダーに適したラインはありません。
適材適所ではありますが、今回はショックリーダーとして使用する際に適したラインはナイロンラインであるとの結論に至った根拠を説明いたします。
根ズレ耐性に必要な要素
根ズレによるラインブレイクを防ぐためには、ラインの線径が太いことが重要です。
当たり前ですね。
では、同じ強度(lb)でフロロカーボンとナイロンラインの線径を比べてみましょう。
ざっくりですが、ひと回りほどナイロンラインが細くなるはずです。
根ズレの強度を比較する際は、引っ張り強力(lb)ではなく、線径(mm)を揃えて比較する必要があります。
根ズレに強いラインの条件
- 線径が太い
- 傷が入りにくい
- 樹脂本来の特性
線径が太いほど根ズレに強くなるのは当然です。
であれば、同じ線径で根ズレ強度をナイロンとフロロカーボンで比較した場合、結果はどうなるでしょうか?
結果は圧倒的にナイロンが強くなります。
更に引っ張り強力も強くなるので一石二鳥ですね。
ただ、同じプラスチックなのに強度に差が出るのは不思議ではないですか?
それには、素材的な理由があります。
素材的な特性
ナイロンとフロロカーボンは同じプラスチックですが、素材的な特徴が異なります。
この特徴差は、分子構造により異なるので素材としての特徴を見比べてみましょう。
ナイロン(ポリアミド)について
ナイロン®︎は80年以上前にデュポン社によって開発されたプラスチックです。
金属部品の代替として、自動車部品など様々な市場に広く浸透した後、ナイロン繊維の開発に成功し、ファッション業界に革命を起こします。
その繊維化の技術が釣り糸に応用されているわけです。
そんなナイロン®︎の特徴は以下になります。
ナイロン®︎(ポリアミド)の特徴
一般的にポリアミドには次のような優れた特性があります。
・機械的な特性が優れている
・耐摩擦摩耗性が優れている
・耐熱性が優れている
・耐有機溶剤性が優れている
・様々な物質との親和性があり染顔料、安定剤、添加剤、強化材などが配合できる
・絶縁耐力に優れている反面、次のような使いにくさもあります。
・使用される環境の湿度によって寸法や特性が変化する
・高温で長時間水分と共存すると分子量低下による物性変化が生じやすい引用元:https://www.asahi-kasei-plastics.com/column/07/
釣り業界では「根ズレに弱い」「吸水性が高く劣化しやすい」とよく言われておりますが、実は一般的な認識からはズレています。
ナイロンラインは根ズレに弱いと釣り業界ではよく聞きますが、素材的な特徴として耐摩擦摩耗特性が強いとあります。
つまり、柔軟性があって摩擦や摩耗に強いナイロンラインは釣り糸に最も適したラインだと言えるでしょう。
吸水性についても、自動車部品使用されているナイロンが数日雨に曝されて品質劣化が起こるなんてことはないですよね?
ナイロンの吸水による品質劣化を肌で感じるには、数日間水に浸しておく必要があります。
一日中同じナイロンラインを使用したとしても、水に接触している時間は数時間ですよね?
吸水性での劣化も釣りではさほど気にしなくても良いと言えます。
フロロカーボン(フルオロポリマー)について
一般的にフルオロポリマーと呼ばれ、フッ素と炭素から成る高分子化合物。
釣り業界ではナイロンよりも硬いので耐摩耗性が強く、切れにくい。
さらに、透明性が高いので魚から見切られにくい、となってます。
そんなフロロカーボンの特徴を見ていきましょう。
フロロカーボン(フルオロポリマー)の特徴
フルオロポリマーは、いくつかの非常に望ましい性質を有するため、工業用コーティングにおける使用が強く求められている。第1に、フルオロポリマーは、非粘着性の調理器具での使用によって証明されるように、優れた非粘着性を有する。また、フルオロポリマーは摩擦を低減し、腐食に抵抗する。彼らはまた、非常に高い温度にも耐える。フルオロポリマーは絶縁体であり、電気を伝導しないことを意味する。彼らは水も吸収しません。このような要因の組み合わせは、エレクトロニクス、自動車などの用途に理想的です。 フルオロポリマー樹脂は、粉体塗料および液体塗料の両方において、外装耐候性およびUV安定性のための最上位のものである。フルオロポリマーパウダーコーティングは、建築市場向けに意図的に作られており、長寿命の耐久性のある仕上げを提供します。フルオロポリマー粉末被覆樹脂系は、高性能AAMA 2605規格の要件を満たすように配合することができる。 これらの仕上げは、湿気、風化、オゾン、紫外線に強いです。
引用元:https://www.sames.com/japan/jp/materials-fluoropolymer.html
簡単にまとめると
- 摩擦の低減
- 耐腐食性に優れている
- 耐熱性に優れている
- 絶縁性に優れている
- 給水しない
- 耐候性(湿気、オゾン、UV)に優れる
この中で釣りに関係するのは、「摩擦の低減」「耐腐食性」「耐候性」でしょうか
「摩擦の低減」とは、フロロカーボンの滑らかで硬い表面特性により、滑沢性を得られた結果、摩擦しにくくなっているということで、「摩擦に強い」とは言えません。
岩肌のような細かい凹凸が相手になると、ノコギリのように削られていくので、あまり効果は実感できまいでしょう。
「耐腐食性」「耐候性」に関しても、差が出るのは数日経過後です。
普通に数時間釣りをする程度ではあまり効果を実感できないでしょう。
また、透明性に関してはヒトの目で見た透明性です。
魚が認識できているかは不明なので、過剰に気にする必要はありません。
釣れる時は釣れます。
結局釣りに適した素材はどっち?
柔軟性の高いナイロンと硬度の高いフロロカーボン
結局どっちが強くなるのでしょうか?
引っ張り強度はナイロンが強いのは周知の事実として、耐摩耗性を比較してみましょう。
結論として、岩肌に接触して傷が付きやすいのは硬いフロロカーボンです。
ナイロンは柔らかくて傷が入りにくいのが特徴になります。
理由を解説します。
柔軟性の高いナイロンは、硬い物と衝突に対し、自身変形させて衝撃を吸収します。
鋭利な岩肌に接触し、強い負荷がかかったとしても、受け流すことができるのです。
したがって、傷が入りにくいので、根ズレにも強くなります。
逆に硬い物質は硬さ勝負を挑んでしまいます。ヒトと同じですね
フロロカーボンも例外ではなく、硬い物質に対し、硬さで勝負してしまうのです。
当然、石や岩には敵わずに負けてしまうので、根ズレに弱くなります。
軽く擦っただけで傷が入り、糸状のささくれが出来やすいのはそのためです。
傷がつきやすい=根ズレに弱い
フロロカーボンラインは硬いが故に衝突に弱くなってしまっているのです。
根ズレの理由
そもそも、なぜ根ズレするのでしょうか?
それは、魚に主導権を握られてしまうからですね。
ヒラマサやカンパチが典型例です。鬼のように突っ込みます。
このような魚達に主導権を握られてしまうと、根ズレに繋がります。
であれば、魚に主導権を渡さなければ良い話し。
根ズレさせないようにするには、魚に主導権を渡さないように、魚より強く引き寄せる必要があります。
沈み根を躱したり、魚の頭の向きを変えてやるのにも、テクニックより力業です。
てなると、引っ張り強力が強いラインが有利ではないでしょうか?
同じ線径で比較して、引っ張り強力が強くなるのはナイロンです。
であれば、ナイロンラインを使った方が有利という結論に至ります。
結束強力
ナイロンは結束強力が強くなる。
理由は柔軟性が高いので、結び目が密着し、摩擦係数が高くなるからです。
リングへ結ぶ際も柔軟性が活きますが、メインラインとの結束の際も、この特徴が活きます。
特に摩擦系のノットでは、この特徴を最大限引き出すことで、強靭な結束強力を得ることができるのです。
結束強力が強くなるのであれば、PEラインを太くせずにドラグを強く締め込むことができるようになります。
つまり、無理して太いPEラインを使わなくても、充分な強度を得られるということです。
フックからリールの間で、最も弱くなる箇所は結束箇所になります。
より強い引っ張り強力を得るために、より太いPEラインを選び、それに合わせてより強いタックルを用意する必要はありません。
まずは既存のタックルの内、最弱の結束強力の強化から始めてみてください。
完璧に結束できていた場合、単純な引っ張りだけでPE3号を切るのは至難の業です。
ロッドを介した引っ張りで切るのはほぼ不可能になります。
魚によく切られる方は、まず初めに結束箇所を疑いましょう。
まとめ
ショックリーダーに適したライン素材について、ご理解いただけたでしょうか?
ショックリーダーに求められる機能は、根ズレに対する強度と結束強力です。
それらを高次元で持ち合わせるのがナイロンラインとなります。
フロロカーボンラインも優れたラインではありますが、ショックリーダーでの使用となると、様々な面でナイロンラインに劣るのが現実です。
ついでに言うと、ナイロンラインは価格が安いです。
根づれに強く、結束強力高いのに、価格が安い。
コストメリット抜群ですね。
ナイロンラインに対してネガティブな印象を持っていた方は、ぜひ試してみてください。
結束協力が上がるだけでも、不意の大物に対して余裕を持ったファイトが可能になります。
その分、キャッチ率が向上し、今まで出会えなかった大物との遭遇率も格段に上がることでしょう。